結論から書きます。本社と現場に、上も下もない。しんどさにも順番はつけられません。種類が違うからです。
私は駅員から車掌、運転士と進み、そのあと本社の企画部門で働きました。今は自分の希望で現場に戻っています。行って、戻ってきた側からの話です。
この記事で分かるのは3つです。
- 本社に移って、生活の何が変わったか
- 現場と本社で、いちばん違ったこと
- 総合職か現業職かで迷っている人への、私の答え
本社に行く=出世。現場に残る=そうじゃない。そんな見方をしていませんか。私も現場にいたころは、本社の仕事がどんなものか、見えていませんでした。
キャリアの流れ全体は駅員→車掌→運転士→本社。鉄道会社のキャリアは一本道じゃなかったに書きました。この記事は、本社と現場の違いだけに絞ります。なお、部門の役割も呼び方も会社によって違います。ここに書くのは、私ひとりの体感です。
運転席から見える景色と、路線図を上から見る景色
運転席に座ると、見えるのは目の前の信号と、次の駅です。今日の一本を、時間どおりに、安全に。それだけを見ています。
路線図を上から見る側は違います。線と線がどこでつながっているかは見えます。でも、運転席の揺れは伝わりません。
現場と本社の関係が、ちょうどこれでした。どちらが正しいのでもなく、見えているものが違う。上から見えるほうが偉い、という話でもない。揺れは、座った人にしか分からないからです。
制服を脱いで、先に変わったのは生活のほうだった
本社への異動は、ある日いきなり辞令で来ました。制服はスーツになりました。ここまでは前の記事に書いたとおりです。
実際に移ってみて、先に変わったのは仕事より生活でした。
- 1週間の生活リズムが整った
- 朝は、家のことが終わってから出る
- 着るものはスーツで統一
- 鞄の中身が、泊まり勤務のときよりとても軽くなった
- 昼ごはんは社食
そして、しばらくすると、ひとつの言葉が浮かぶようになります。毎日変わらないな。
誤解のないように書いておきます。退屈だったのは仕事じゃなくて、自分の生活のほうです。毎日同じ時間に起きて、仕事に行って、ほぼ同じ時間に帰る。規則正しすぎたせいか、何も考えずになんとなくやっていた気がします。もう少し変化が欲しかったのかもしれません。
前回の記事で、休職する前の私は日勤だったと書きました。朝行って夜帰る、あの毎日のほうが私にはつらかったのかもしれない。今はそう思っています。
異動で変わるのは、仕事の中身だけでしょうか。私の場合、先に変わったのは朝起きる時間でした。泊まり勤務のある生活のほうは泊まり勤務との付き合い方に書いています。
いちばん違ったのは、自分で計画を立てられること
現場と本社で何がいちばん違ったか。時間の使い方です。本社では、自分の裁量でいろいろ決められました。
現場は、何時にこれをやると決まっています。そこへ突発的なイレギュラーが次々に入ってきます。事象が起きたら、みんなで対応する。目の前にお客様がいるので、一刻の猶予もありません。
本社には、その突発が現場ほどありませんでした。だから自分で計画を立てて進めます。私もしっかり計画性を持つようになりました。
ここで、私は失敗しています。
現場のやり方をそのまま本社に持ち込んだんです。「自分が、自分が」。何でも自分で背負ってしまいました。
本社では、ある程度自分の担当が決まっています。担当をベースに進めて、何かあればフォローに回る。その感覚に切り替えられないまま、あれもこれもと手を出しました。結果、本来やらなければならなかった自分の仕事がうまくいきません。自分でスケジュールを組んでいるのに、そのスケジュールが回らない。
何でも自分で背負っていませんか。現場ではそれが長所になります。場所が変わると、同じ長所が空回りします。長所は、長所が生かせる場所で咲くのがいちばんいい。私の場合、それが現場でした。
うれしかったのは、自分の考えたことを誰かがやってくれたとき
本社でうれしかった瞬間も書いておきます。
自分で考えたことが、少しずつ実行されていったときです。自分の考えを、他のみなさんがそのまま形にしてくださる。あれはとてもうれしかった。
現場でお客様から「ありがとう」と言われるうれしさと、種類が違ったか。違いません。うれしいものは、うれしいです。
「上が勝手に決めた」と思っていたころの私へ
上が勝手に決めた。職場でそんな言葉を聞いたこと、ありませんか。現場にいたころの私は、その意識がとても強くありました。
本社に行って知りました。本社の仕事は、現場の仕事が分かっていないと何も始まりません。
本社の人たちは、私たちの仕事を見て、一つ一つやってくださっていました。ただ、なかなか形になりにくい仕事です。だから現場に伝わっていないだけでした。
現場に戻ってから、見え方はもう一段変わります。本社で考えられていることは、とてもよく考えられているんだな。仕事のやり方が決められたとおりに進んでいく。そこはとてもいいなと思います。
本社は本社の仕事、現場は現場の仕事がある。それぞれが自分の役割を全うしている。今はそう理解しています。
現場に戻った経緯は駅員に戻った私の復職のリアルに書きました。
総合職か、現業職か。私の答えは総合職です
就活生に聞かれたら、私は総合職と答えます。
理由は、選択の自由があるからです。総合職はフィールドが自由で、辞令でいろいろな場所へ行きます。現業職は「現業」がベースにあるので、その地域、その枠の中で仕事をすることが多くなります。異動で出ていく範囲が狭い、と言ってもいいかもしれません(私の会社の場合です)。
ただし、現業職でもいろいろなフィールドで働きたいなら、自分から希望を出していけます。道は閉じていないんです。
そのうえで、選び方は2つに分かれます。
- これがやりたい、と決まっている人 → その道へ進む
- あれもしたい、これもしたい人 → 総合職が一番
私自身は現場が好きです。それでも総合職をすすめるのは、選択の自由があるほうが、本当にやりたいことを選べるからです。
私は「駅員がやりたい」と決まっていました。だから駅員の道を選び、本社から現場に戻りました。逆のことを言っているようで、同じことを言っています。
どちらかを選んだら、もう片方は選べない。そんな気がしていませんか。私は行って、戻ってきました。
異動が不安なあなたへ。譲れないものを一つだけ決めておく
異動が決まって不安な人に、かける言葉は決まっています。
なんとかなるから、その状況に自分を合わせてみよう。
どれくらいで慣れるか。私の場合は1〜2か月でした。泊まり勤務に体が慣れるのと、だいたい同じです。それまでは戸惑って当たり前だと思ってください。
そのうえで、一つだけ持っておいてほしいものがあります。譲れないところは人それぞれあるので、そこだけ大事にすればいい。
私の譲れないところは、毎日楽しく仕事をすることです。
本社では、ほぼ毎日パソコンに向かっていました。現場では、パソコンだけでなく目の前にお客様がいます。そこが私には大切でした。だから戻りました。それだけの話です。
あなたが仕事で譲れないものは、何でしょうか。すぐに出てこなくても大丈夫です。
本社と現場に、上も下もない
本社と現場の違いは、偉さとは別のところにあります。見ている場所と、役割の違いです。どちらもしんどくて、どちらにもうれしい瞬間があります。
今日やってほしいことを1つだけ。
あなたの仕事がお客さんに届くまでに、何人の手を通っているか。3人まで数えてみてください。1分で終わります。
自分より前に誰がいて、後ろに誰がいるか。3人目まで浮かんだら十分です。顔が見えない人の仕事は、形になりにくいだけで、たしかにそこにあります。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。本社も現場も、どちらも鉄道の仕事です。
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