結論から書きます。私の実感では、性格だけを見て「駅員に向いていない」と決められる人はいません。ただ、仕事でしんどくなりやすい癖はあります。
私は駅員から車掌、運転士と進み、本社勤務を経て、今は自分の希望で駅に戻っています。途中に半年の休職がありますが、休んだのは駅員のときではなく、本社の企画部門にいたときです。
その、しんどくなりやすい癖を、私は4つとも持っていました。
この記事で分かるのは3つです。
- 私が持っていた4つの癖と、今の付き合い方
- 長く続けている人に共通していること
- 休職前の私を振り返って感じる、「向いてない」と「もう限界」の違い
求人票を眺めながら手が止まっている方にも、今まさに改札に立ちながら考えている方にも、同じことを書きます。今日じゅうに答えを出さなくてかまいません。
仕事のきつさそのものは駅員の仕事はきつい?に書きました。この記事は向き不向きだけに絞ります。会社によって仕事の中身は違うので、ここに書くのは私ひとりの体感です。
決められないのは、駅員の仕事の幅が広すぎるから
駅員は、駅にまつわることを何でもやる仕事です。
案内も、きっぷも、放送も、トラブルの対応も、設備の見回りもあります。確認が丁寧な人が要ります。自ら考えて行動できる人も要ります。得意の形が決まっていないので、「この型でなければ務まらない」という線を引けません。
だから、当てはまったら向いてない、という一覧表はこの記事に作りません。その一覧表で人生を決めるには、この仕事は幅が広すぎます。
向いてないかもしれない。そう思ったとき、辞めるか、我慢して続けるか。この二択で考えていませんか。
私はもう1つあると思っています。徐行です。
列車は、条件が悪いところでは速度を落として走ります。無理に焦ることはなく、ゆっくり走る。そして自分の状態がよくなったところで、普通の速度に戻す。それでいいと思っています。
徐行には解除があります。区間を抜ければ、元の速度に戻すこともできます。
しんどさに効いた順に、私の4つの癖と付き合い方
私に当てはまったものを、しんどさに効いた順に並べます。4つとも、今も完全には消えていません。だから、どう付き合っているかのほうを一緒に書きます。
1. 全部のお客様に100点を取りにいってしまう
これがいちばん効きました。丁寧にやれば全員に伝わる、と思っていた時期が長かったです。新入社員のころ、こちらの言葉の揚げ足を取られたこともありました。
今はやめました。お客様が求めている最低条件のものだけは、必ず提示する。そこから先は、正直、全部を合わせるのは難しいです。だからこそ、お客様と私のいい塩梅のところを探しています。
2. 「助けてほしい」と言うのが遅くなる
自分でなんとかしないと。そう思うほど、声をかけるタイミングを逃します。私は長いこと、そのタイミングを逃し続けてきました。
休職を経て、変えたことがあります。文字でも言うようにしました。口で言い出せないときは、チャットで書きます。
支えになった考え方があります。私の気持ちは伝えたので、そこから先のアクションは、私が考えられることではありません。私は言って満足するだけで大丈夫。そう思えるようになりました。共有してもらえること自体がうれしい。今はそう感じています。
3. 言われたことを、勤務が終わっても持ち帰ってしまう
家では基本的に考えないようにしています。
とはいえ、嫌な出来事があった日は、そう簡単に切れません。私の場合は、一回家に帰って、そのあともう一度外に出ます。ショッピングか、お風呂に入りに行くことが多いです。家に入ってから、もう一度外に置いてくる感じでしょうか。
4. 生活のリズムを、仕事に合わせすぎる
これは体から先に来ます。私はもともと、体力に自信がありません。泊まり勤務のある仕事で睡眠と食事を後回しにすると、気持ちより先に体が音を上げます。
やっているのは、明けの日のルーティンを守ることです。それだけで大丈夫でした。泊まり明けの過ごし方は駅員の泊まり勤務に書いています。
私は4つ全部でした。それでも今、駅にいます。
オン・オフの切り替えは、あとから身につけられる
ここからは、私の周りを見ていて思うことです。特定の誰かの話ではなく、何人分かをならした話として読んでください。
つまずきやすいのは、超がつくほど真面目な人です。
意外でしょうか。真面目さは、駅の仕事にどうしても必要なものです。ただ、全てを受け入れていると、自分で調整ができなくなります。お客様の要望も、頼まれごとも、全部を正面から受け止めていたら、いつか先に自分が止まります。
逆に、長く続けている人には、はっきりした共通点があります。オン・オフがはっきりしている。集中するところは集中して、しないところは完全に切る。切り替えが上手いのです。
では、切り替えが下手な人は向いていないのか。私はそうは思いません。
この切り替えは、生まれ持った性格ではなく、働きながら身につけたものだからです。私自身も、働きながら少しずつ身につけました。生まれつきの条件ではなく、あとから身につくやり方。だから私は、性格だけで向き不向きを決めなくていいと思っています。
私には、3つの条件は要りませんでした
鉄道が好きじゃないと続かない。そう聞いたことがありますか。
私の実感では、次の3つは要りませんでした。
- 鉄道が大好きであること … 駅に来るお客様が、みんな鉄道好きというわけではないからです
- 人前で話すのが得意であること … うまく相手に伝われば、それで足ります
- 機転が利くこと … 私の場合は、駅員としてできることが限られていたからです
代わりに、就職する前の自分に何か確認させるとしたら、体力があるかどうかです。体力がいちばん大事だと思っています。4つ目の癖に書いたとおり、気持ちより先に体が音を上げるからです。その体が実際どうなるのかは、駅員は体を壊すのかという記事に書きました。
私も「向いてないかも」と思う日が、今もあります
正直に書きます。過去の話ではありません。
同じことを何度も聞かれて、イライラして、何も考えられなくなるときがあります。そういうとき、私はお客様に、わーっと当たってしまうことがあります。
言ったあとに気づきます。あ、やってしまったな、と。
そうしたら、一旦後ろに下がります。少し離れて、息を整える。深呼吸をする。それだけです。整えてから、また前に出ます。
お客様には申し訳ないと思っています。私にとって100回目の質問でも、お客様にとっては1回目です。頭では分かっていて、それでも出てしまう日がある。ここは、まだ外しきれていない癖です。
仕事で、つい態度に出てしまったこと、ありませんか。出てしまう自分を責めるより、出たあとにどう戻るか。私の場合は「一旦後ろに下がる」です。
私にとって、「向いてない」と「もう限界」は別の話でした
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
ここから書くのは、医学的な見分け方ではありません。休職前の自分を振り返って、私が感じている違いです。
休職前の私が向いてないと悩んでいたときは、仕事はできているけれど、考えて、考えてしまう状態でした。「やっぱり向いていないのかな」と、自分について考えられていました。
一方で、もう限界だったときは、何も考えられませんでした。自分でもどうしていいか分からず、誰にも相談できませんでした。
考えられているから大丈夫、という意味ではありません。あくまで、休職前の私を振り返って感じる違いです。
「向いてないのかな」と考えていたころの私には、やり方を変える道と、職種を変える道がありました。鉄道の仕事は駅の外にもあります。私も駅員から車掌、運転士、本社と移りました。その道のりは鉄道会社のキャリアは一本道じゃなかったに書いています。
何も考えられなくなったときの私は、工夫では解けず、休むほうの話になりました。私はそこまで行ってから休みました。そのときのことは仕事で心が折れたに書いています。
私は、考えられなくなるまで気づけませんでした。眠れない日や、食べられない日が続いているなら、向き不向きより先に、身近な人か専門家に話してみてください。
休むかどうかを決めるのは、あなたと、専門家です。
向いてないかもしれない、と思えている人へ
私は、自分の希望で駅に戻りました。駅員になりたくて鉄道会社に入ったので、戻ることに苦はありませんでした。お客様と実際に接しながら仕事をしたい。そこは変わりませんでした。
性格だけを見て向いていないと決められる人はいない。私はそう思っています。あるのは、しんどくなりやすい癖です。癖は、今も完全には消えていません。それでも、付き合い方は変えられました。
今日、試してほしいことがあります。
今日、家に入る前でも、入ったあとでもいいので、どこかに少しだけ寄ってみてください。私は一度家に帰ってから、もう一度外に出ます。コンビニでも、いつもと違う道でも構いません。
仕事と自分のあいだに、少しだけ距離をつくる。オン・オフの切り替えの、いちばん小さい練習です。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。ゆっくりで大丈夫です。
出発進行!
休職→復職シリーズ(全4話)
- 第1話 仕事で心が折れた。鉄道員の私が半年の休職を決めるまで
- 第2話 休職したらお金はどうなる?傷病手当金でいくら入ったかを正直に書く
- 第3話 休職中、何もできない自分を責めていた。半年間の過ごし方を正直に書く
- 第4話 「また折れるかも」を抱えたまま 駅員に戻った私の復職のリアル
この記事には休職の経験が含まれます。心身の不調を感じている場合や、休職・復職の可否やタイミングの判断は、必ず主治医・産業医などの専門家にご相談ください。回復には個人差があります。

