(休職→復職シリーズ 第2話)
結論から言います。仕事を休んでも、収入はゼロにはなりません。
健康保険から「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」というお金が出ます。給料のおおよそ3分の2が、休んでいるあいだ支払われる制度です。
第1話で、私は半年の休職を決めるまでを書きました。まだの方はこちらからどうぞ。
そして、私がいちばん怖かったのがお金でした。「休んだら家族を養えない」。深夜だけでなく、ふとした瞬間に、何度もそう思いました。
この記事では、その傷病手当金のことを正直に書きます。いくら入るのか、いつ入るのか、どう申請するのか。そして我が家が収入の減った半年をどう乗り切ったか。読み終えたとき、お金の不安が少しでも軽くなっていたら嬉しいです。
休んでも収入はゼロにならない ―「傷病手当金」の話
もう一度言います。会社を休んでも、お金は入ります。
会社員なら、健康保険に入っているはずです。その健康保険から出るのが傷病手当金です。病気やケガで働けなくなったとき、生活を支えてくれるお金です。
傷病手当金という名前は、私も知っていました。でも、どうやって使うのかは、まったく分かりませんでした。
たぶん、いまこれを読んでいるあなたと同じだと思います。制度があることは聞いたことがある。でも、いざ自分が使うとなると、何から手をつければいいのか分からない。私もそこからのスタートでした。
もらえる条件と、もらえる期間
まず、もらえる条件です。大きく4つあります。
- 仕事以外の理由の病気やケガであること(仕事中のケガは労災の話になります)
- その病気やケガで働けない状態であること
- 続けて3日休んだうえで、4日目以降も休んでいること
- 休んでいるあいだ、会社から給料が出ていないこと(一部出ている場合は差額の調整があります)
最初の3日間は「待期(たいき)」と呼ばれ、この期間には手当金は出ません。4日目からが対象です。
次に、もらえる期間です。支給が始まった日から、通算で1年6か月まで。
「通算」がポイントです。2022年の制度改正で変わりました。途中でいったん復職して、また休んだ場合、復職していた期間はカウントされません。休んだ日を積み上げて1年6か月ぶん、という数え方です。
「給料の3分の2」は、思ったより手元に残らない
ここは正直に書きます。「3分の2」を聞いて安心しすぎないでください。
理由は2つあります。
1つ目。「給料の3分の2」の「給料」は、手取りではありません。額面をもとにした金額です。正確には「標準報酬月額」という、社会保険の計算に使う金額が土台になります。手取りのイメージとは少しズレる、とだけ覚えてください。
2つ目。これが大事です。手当金からも、社会保険料と住民税は出ていきます。
会社を休んでいても、健康保険料や年金の保険料、住民税の支払いは止まりません。給料天引きだったこれらを、休職中は自分で払うことになります。だから手元に残る感覚は、「3分の2」よりもっと減ります。
私はここを甘く見ていました。「3分の2も出るなら大丈夫」と思っていたら、そこから引かれるお金があったんです。
私の場合、手元に残る感覚は5割くらいでした。「3分の2はもらえる」と聞いていたのに、税金や保険料が引かれて、実際に使えるのは半分くらい。そういう体感です。
保険料や住民税を休職中にどう払うかは、会社によってやり方が違います。会社の口座に振り込む形だったり、住民税は自分で納める形に切り替わったり。ここは必ず、勤務先の人事や総務に確認してください。これだけは早めに聞いておくと安心です。
いつ振り込まれる?「すぐには入らない」という落とし穴
もうひとつ、先に知っておいてほしいことがあります。手当金は、休んですぐには振り込まれません。
申請してから実際にお金が入るまで、目安として1〜2か月かかることがあります。とくに初回は時間がかかりやすいです。
これは公式に「何日で振り込む」と決まっているわけではなく、私や周りの経験からの目安です。だから、あなたのケースで前後する可能性はあります。
正直に言うと、いちばん怖かったのは、この待つ時間でした。それまでは毎月決まった日に、給料が振り込まれていました。その当たり前が止まる。給料が振り込まれない恐怖を、私はこのとき初めて感じました。
そして手当金が実際に入ったとき、思わず「あ、これで大丈夫、生活できる」と思いました。口座の数字を見て、ほっと力が抜けたのを覚えています。あの安心感は、いまも忘れられません。
もうひとつ、私の場合は助かったことがありました。加入していた健康保険に「付加給付(ふかきゅうふ)」という上乗せの制度があったんです。おかげで、本来の傷病手当金にプラスアルファのお金をもらえて、とても楽でした。
この上乗せがあるかどうかは、加入している健康保険によって違います。あるとないとでは大違いなので、勤務先の健保に一度確認してみてください。
ここで一番伝えたいのは、休みに入る前後の生活費です。最初の1〜2か月は手当金が入らない前提で、手元にお金を用意しておく。これができると、心がずいぶん楽になります。
申請はどうやる?意外とシンプルな手続きの流れ
手続きと聞くと身構えますよね。でも、流れ自体はシンプルです。
申請書は4ページで、書く人が3者に分かれています。
- あなた(本人)が書くページ … 名前や振込口座など
- 会社が書くページ … 休んだ期間や給料が出ていないことの証明
- お医者さんが書くページ … 働けない状態だという証明
この3者ぶんが揃って、はじめて申請できます。提出先は、加入している健康保険(協会けんぽや、会社の健保組合)です。
申請は1回で終わりではありません。休みが続くあいだ、だいたい1か月ごとに繰り返し出していきます。だから最初に流れをつかんでおくと、あとがぐっと楽になります。
私の場合、書類仕事は思っていたほど大変ではありませんでした。見本があったので、それを見ながら自分で書けたんです。
助かったのは、休職中に2週間に一度、上司と面談する機会があったことです。書き方で迷ったところは、その場で聞けました。会社との定期的な接点があると、手続きの疑問をそこで解消できます。そういう場がなくても、人事や総務に聞けば教えてくれます。
とはいえ、心が弱っているときは、簡単な作業でも重く感じるものです。しんどいときは、ひとりで抱えないでください。会社の担当者は、この手続きに慣れています。分からないところは、遠慮なく頼っていいんです。
我が家はどう乗り切ったか ―収入が減った半年のリアル
ここが、この記事でいちばん書きたかったことです。
手当金が出るとはいえ、収入は確かに減ります。我が家の稼ぎ頭は私で、妻は専業主婦です。私の収入が止まると、家の収入がまるごと止まる。これは我が家にとって、本当に大きな出来事でした。
さきほど書いたとおり、手元に残る感覚は5割くらい。稼ぎがおおよそ半分になった体感でした。
正直、その数字を見たときは不安が押し寄せました。でも、やってみて分かったことがあります。減った収入の中でも、暮らしは回りました。理由は、備えがあったからです。
じつは我が家は、何かを大きく削ることはしませんでした。外食を我慢したり、子どもの習い事をやめたりはしていません。暮らしは、休む前とほとんど同じでした。
そんなことができたのは、「生活防衛費」を用意していたからです。生活防衛費とは、病気や失業でお金が入らなくなったときのための貯金のこと。何かあったときに困らないよう、生活費の何か月分かを別に貯めておくお金です。
私は以前からこの考え方を学んでいて、まさにこのために貯金をしていました。そして、いざというときが本当に来た。だから、貯めておいたお金を使いました。それだけです。
このとき、心から思いました。普段から貯金していくのが、いかに大事か。お金があること以上に、「まだ大丈夫」と思えることが、弱った心の大きな支えになりました。収入が5割の感覚まで減っても、暮らしを変えずに済んだ。その安心が、休むことに集中させてくれたんです。
家族のことも書いておきます。もともと私が心の不調で休んでいたので、お金の話も自然と通りました。改めて深刻に説明しなくても、家族はもう状況を分かってくれていた。隠さずに休んだことが、結果的にお金の面でも家の空気を軽くしてくれたと思います。
お金の不安に、先に手を打っておく
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 会社を休んでも、傷病手当金で給料のおおよそ3分の2が出る
- ただし社会保険料と住民税が引かれる。私の手元に残った感覚は5割くらい
- 健康保険によっては上乗せ(付加給付)がある。勤務先の健保に確認を
- 最初の1〜2か月は振り込まれないことがある。生活費を用意しておく
- 申請は本人・会社・医師の3者で書く。見本を見れば自分で書けるし、担当者も頼っていい
- いざというときの貯金(生活防衛費)があれば、暮らしを変えずに乗り切れる
お金の不安は、正体が分からないうちがいちばん怖いです。「いくら出て、いつ入って、何が引かれるか」。これが見えるだけで、夜の不安はかなり小さくなります。
今できる一歩をひとつだけ。
「傷病手当金」で検索して、自分の加入している健康保険のページを開いてみてください。
協会けんぽの人は協会けんぽ、健保組合の人は組合のページです。制度が自分にも使えると分かるだけで、少し息がしやすくなります。私を助けてくれた上乗せ(付加給付)があるかどうかも、あわせて確認してみてください。
第1話で私は「休むのは逃げじゃない」と書きました。お金も同じです。制度は、あなたが安心して休むために用意されています。使っていいんです。
次の第3話では、休んでいる半年を私がどう過ごしたかを書きます。何もできない日々に、どう折り合いをつけたか。復職への道のりを、また正直に書きます。
▶ 休職中、何もできない自分を責めていた。半年間の過ごし方を正直に書く
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。今日はここまで。あなたのお金の不安が、少しでも軽くなりますように。
出発進行!
制度の内容は変わることがあります。最新の情報は協会けんぽや勤務先にご確認ください。

