結論から言います。復職前の面談は、落とすための試験ではありません。あなたと、主治医・産業医(会社の健康を診る医師)・会社が、安全に戻れるかどうかを一緒に確かめる場です。
だから、気負わなくていいです。私が面談の前にやったのは、いつもの生活を淡々と続けることと、それまでの記録をまとめておくことだけでした。
先に2つ、お断りしておきます。
ひとつめ。この記事で「面談」と呼んでいるのは、産業医との復職面談です。復職できるかどうかの判断に関わる、正式な面談を指します。休職中に上司と近況を話すやり取りとは別物なので、そちらは書きません。
ふたつめ。私の面談で誰が出席して、何を聞かれたかは書きません。勤務先が分かってしまうからです。代わりに、一般的な流れと、私が面談を前にして考えていたことを書きます。
復職そのものの怖さは、「また折れるかも」を抱えたまま 駅員に戻った私の復職のリアルに書きました。この記事は、そのなかの「面談」だけを取り出したものです。流れも呼び方も勤務先によって違います。ここに書くのは一般的な形と、私ひとりの体験です。
面談は試験ではない。ただし、決めるのは会社です
「何を聞かれるんだろう」「答えを間違えたら、復職が遠のくんじゃないか」。そう思うのは、面談を試験だと思っているからです。面談の目的は、点数をつけることではありません。主治医の見立て、いまの生活の状況、職場の受け入れ体制を突き合わせて、どう戻るかを決めるためにあります。
先に、少しきつい事実も書いておきます。復職できるかどうかを最終的に決めるのは、会社です。厚生労働省の手引きにも、最終的な職場復帰の決定を行うのは事業者だと明記されています。主治医が「復職可能」と書いてくれたら自動的に決まる、というものではありません。
ただし、会社の気分で決まるわけではありません。主治医の診断は、日常生活が送れる程度まで回復したかで判断されていることが多いとされています。だから産業医が、職場で求められる仕事の中身と突き合わせて意見を出す。それを踏まえて会社が決める仕組みです。ひとりの判断で決まらないようにできています。
一回の受け答えのうまさで、巻き返せる場でも、失敗する場でもありません。
面談の前の夜、頭のなかで質問と答えを何度も練習していませんか。その練習は、たぶん要りません。
見られているのは、話し方ではなく「生活」
厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を出しています。会社向けの手引きで、復職支援の標準的な流れがここにまとまっています。
| ステップ | 何をする段階か |
|---|---|
| 第1 | 病気休業の開始と、休業中のケア |
| 第2 | 主治医による「職場復帰が可能」の判断 |
| 第3 | 職場復帰の可否の判断と、職場復帰支援プランの作成 ←面談はおもにここ |
| 第4 | 事業者(会社)による最終的な職場復帰の決定 |
| 第5 | 職場復帰後のフォローアップ |
面談が第3ステップにあるのは、主治医から「戻れます」という判断が出たあと、それを職場の現実と突き合わせる段階だからです。
手引きには、復職できるかを判断するときの目安も、例として挙げられています。
- 本人に十分な意欲があるか
- 通勤の時間帯に、ひとりで安全に通勤できるか
- 決まった勤務日・勤務時間に、続けて働けるか
- 仕事に必要な作業ができるか
- 仕事の疲れが、翌日までに回復するか
- 睡眠と起床のリズムが整っていて、昼間に眠気がないか
- 仕事に必要な注意力・集中力が戻っているか
話し方がうまいかどうかは、1つも入っていません。入っているのは、通勤・勤務時間・睡眠・疲れの取れ方。つまり、いまの生活がどうなっているかです。うまく説明できなくても大丈夫。それは調子が悪いからではなく、記録がないだけかもしれません。
ただし、これは手引きが示した例です。法律ですべての会社に義務づけられた手続きでも、決まった基準でもありません。面談の回数、誰が同席するか、試し出勤(リハビリ出勤・通勤訓練)の制度があるかは、会社ごとに違います。いつも連絡を取っている上司や、人事の担当者に聞いてみてください。「面談って、どんな流れですか」の一言で大丈夫です。
試し出勤で実際に何をするのかは、リハビリ出勤って何をするの?カフェで1時間座ることから始めた私の復職訓練に細かく書きました。
面談は、いきなり決まった
ここからは私の話です。
正直に言うと、面談はいきなり決まった感じでした。日程を知らされたとき、びっくりしました。心の準備をしてから呼ばれるものだと、どこかで思っていたんです。
急に決まって、頭が真っ白になっていませんか。もしそうでも、慌てて何かを足す必要はありません。
そのとき気づいたのは、やることは、今まで進めてきたことと同じだということでした。体調の記録をつける。生活のリズムを整える。休んでいるあいだ、ずっとやってきたことです。面談が決まったからといって、新しく始めることはありませんでした。
だから私は、それを淡々と続けました。この「淡々と」が、面談に向けた私の心構えの全部です。
準備は「それまでの記録をまとめる」だけ
面談に向けて私がやったのは、ひとつだけです。それまでの記録をまとめました。
理由は単純で、いざ話すとなると、なかなか出てこないからです。「最近どうですか」と聞かれて、休んでいたあいだの生活を、その場で思い出せる人はいません。私も無理でした。
つけていたのは、Excelの表です。中身は、起きた時間、寝た時間、その日の体調、気分。これだけです。このフォーマットは、カウンセリングを受けていた臨床心理士の先生(心の専門家)からもらったものでした。カウンセリングはZoomだったので、そのたびに画面でこの表を見せながら話していました。面談のために作ったのではなく、もともとあったものをまとめ直しただけです。
紙のノートでも、スマホのメモでもかまいません。寝た時刻と起きた時刻が並んでいるだけで、「調子はいいです」と言うより、ずっと多くのことが伝わります。記録は、記憶より強いんです。
体調のどこに不調のサインが出るかは、復職後に「また沈まない」ための私のルールに書きました。記録する項目のヒントになると思います。
前日と当日に特別なことをしたか、と聞かれると、答えは「していません」です。いつも通り、体調を見ながら過ごしました。早起きもしていないし、話す練習もしていません。特別なことをしない、というのが答えでした。
着飾っても仕方ない ―乗務前の点呼と同じでした
「これだけは絶対に言おう」と決めていたことは、実はありません。決めていなかった、というより、決める必要を感じなかったのが近いです。自分を着飾っても仕方がない。だから、聞かれたことに、自分の思いを淡々と述べました。それだけです。
ここで、鉄道の話をひとつ。乗務員は、仕事に出る前に必ず点呼を受けます。私も運転士のとき、毎回受けていました。そこで話すのは、その日の天候、自分がこれから乗る行路(その日に担当する乗務のスケジュール)、そのうえでの注意点です。今日は雨だからブレーキに気をつけよう、という具合に。
点呼は、責めるための場ではありません。安全に仕事に就くために、状態をそろえて確認する場です。ここで無理をして「大丈夫です」と言ってしまうと、困るのはお客さんと、自分自身になります。
復職前の面談も、これと同じだと思うことにしました。天候にあたるのが、いまの自分の体調。行路にあたるのが、これから戻る職場と仕事です。
早く戻らなきゃと思って、「もう大丈夫です」と言いそうになっていませんか。無理をして戻ると、戻った先で潰れます。正直に話すのは、会社のためではありません。自分を守るためです。
終わってみたら、拍子抜けでした
正直に書きます。終わってみて、すごく拍子抜けしました。身構えていたようなことは、特に起きませんでした。自分の思いを淡々と話しただけで、気づいたら終わっていました。
面談のあと、上司と食事をしました。そこで思ったのが、「あ、こんな感じでいいんだ」でした。やり切った達成感ではありません。ただ単に、終わったという感じです。特別な日にはなりませんでした。
いまになって思うのは、面談は一日で人生が決まる場ではない、ということです。次の面談まで日があくこともあれば、条件つきで先に進むこともあります。
それでも、終わったあとはどっと疲れが出るかもしれません。その日はもう、何もしなくていいです。
まとめ ―気負わなくて、いいです
3つだけ、振り返ります。
- 面談は試験ではない。だから、うまく答える準備はいらない
- 見られているのは話し方ではなく、通勤・勤務時間・睡眠といった「生活」
- 私が持っていったのは、立派な答えではなく、ただの記録だけだった
特別なことはしない。いつもの生活を淡々と続けて、着飾らずに、聞かれたことを淡々と話す。私が大事にしたのは、これだけです。
今日やってほしいことを1つだけ。
今日から、寝た時刻と起きた時刻だけメモしてください。1日1行、30秒で終わります。
紙でもスマホでもかまいません。体調や気分を書き足すのは、余裕がある日だけでいいです。書けない日があっても大丈夫。空欄が続いたことも、いまのあなたの状態を伝える材料になります。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。あなたの面談が、責められる場ではなく、確かめる場になりますように。
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この記事の制度に関する記述は、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に基づく一般的な情報提供です。すべての会社に義務づけられた手続きではなく、面談の回数・出席者・判断の基準・試し出勤制度の有無は勤務先によって異なります。就業規則・人事担当・産業医にご確認ください。制度や手引きは改訂されることがあります。最新の内容は厚生労働省および「こころの耳」でご確認ください。
復職の可否やタイミングの判断は、必ず主治医・産業医の指示に従ってください。回復にも復職にも個人差があります。この記事は筆者ひとりの体験であり、特定の戻り方をすすめるものではありません。

