【倍率を突破する】現役駅員が教える、鉄道採用試験で「選ばれる人」の共通点

鉄道員になる

「自分は鉄道員に向いているのだろうか?」

鉄道会社への就職や転職を目指しているなら、一度はそう自問自答したことがあるはずです。華やかな制服を身にまとい、何千人もの命を預かって走る姿に憧れを抱く一方で、「自分にあんな重責が耐えられるだろうか」と不安になるのは、ごく自然なことです。

私はこれまで、駅員、車掌、運転士という、現場の主要な職種をすべて歩んできました。多くの同僚や後輩、そして採用の現場を見てきた中で確信していることがあります。

鉄道会社が本当に求めているのは、決して「完璧超人」ではありません。むしろ、一見すると短所に見えるかもしれない「ある種の緩さ」や、目立たない「淡々とした強さ」を持っている人こそが、過酷な倍率を突破し、現場で長く重宝されています。

今回は、現役駅員の視点から、採用試験で見られる「選ばれる人の共通点」を4つの本質的なキーワードで紐解いていきます。


1. 「責任感が強すぎない」という、プロの防衛本能

「鉄道員には強い責任感が必要だ」 これは、あらゆる募集要項に書かれている言葉です。もちろん、嘘ではありません。しかし、現場のリアルな視点で言えば、「責任感が強すぎる人」は、往々にして現場で潰れてしまうリスクを孕んでいます。

なぜなら、鉄道の仕事は「絶対に失敗してはいけない」という極限のプレッシャーの連続だからです。

例えば運転士時代、私は1秒の遅れも許されないダイヤの中で、数千人の命を預かっていました。もしここで「自分の双肩にすべてがかかっている。1ミリのミスも許されない」と過度に自分を追い詰めていたらどうなっていたでしょうか。おそらく、緊張で指先が震え、冷静な判断ができなくなっていたはずです。

大切なのは、責任感に押し潰されることではなく、「決められた手順を、淡々と、マシンのように繰り返す」ことです。

  • 「失敗したらどうしよう」と悩む暇があったら、もう一度指差確認をする。
  • 自分の感覚に頼らず、ルールに従って機械的に「立ち止まる」。

自分一人の責任感で世界を背負おうとせず、組織のシステムやルールに身を委ねられる「良い意味での責任感の分散」ができる人。面接官は、あなたの背負っている「重圧への耐性」を鋭く見ています。


2. 「当たり前」の繰り返しを愛せる、究極のマンネリズム

鉄道の仕事の99.9%は、昨日と同じことの繰り返しです。 「いつも通りに列車が来て、いつも通りにドアが開き、いつも通りに出発する」 お客様にとっての「当たり前」を守ること。それが私たちの仕事のすべてです。そこに派手な演出も、自分だけのオリジナリティも必要ありません。

しかし、この「当たり前」を維持するには、実は並大抵ではない精神力が必要です。その象徴が、「時間に対する異常なまでの執着」です。

鉄道員にとって、朝、決まった時間に起きることは「努力目標」ではなく「絶対の掟」です。このプレッシャーは想像以上に根深く、私自身、この仕事を始めてから今まで、「寝坊して大遅刻する夢」を一体何十回見てきたか分かりません。

「やばい、もう出勤時間だ!」と冷や汗をかいて飛び起き、時計を見て「……まだ深夜か」と安堵する。この、夢にまで追いかけられるほどの「時間の呪縛」を受け入れ、それでも毎日同じ時間にネクタイを締める。この継続力こそが、プロの証なのです。

採用試験では「刺激的な毎日」や「革新的なアイデア」を語る受験者が多いですが、現場が本当に求めているのは、**「毎日同じ動作を、10年、20年と飽きずに淡々と続けられる人」**です。

  • 夢の中でもうなされるほど、時間に厳格であること。
  • 決まった確認を、昨日と同じ熱量で行うこと。

この「淡々とした継続力」は、一見地味ですが、鉄道員として最も希少で価値のある資質です。


3. 人を「嫌いになりきれない」という、しなやかな強さ

駅の現場に立っていると、時に理不尽な状況に直面します。列車に遅れが発生した際、一番最初にお客様の怒りの矛先を向くのは、改札に立つ駅員です。

「なんで動かないんだ!」「責任を取れ!」 厳しい言葉を投げかけられ、心が折れそうになることもあります。正直、人間ですから「なんて身勝手なんだ」と怒りを感じることもあります。しかし、ここで「お客様=敵」と完全に割り切ってしまう人は、長くはこの仕事を続けられません。

鉄道員として大切なのは、「人を完全に嫌いにならない、しなやかな共感力」です。

暴言を吐いているお客様も、実は「大切な商談に遅れそうで焦っている」のかもしれない。あるいは「家で悲しいことがあった」のかもしれない。そうやって、相手の背景に一瞬だけ思いを馳せ、一歩引いて受け流せる力。

これは「お人好し」であることとは違います。プロとして、「感情の土俵に乗らない」ということです。

「全員に好かれる必要はないけれど、完全に嫌いにもならない」 そんな絶妙なバランス感覚を持つ人は、窓口でのトラブルを最小限に抑え、職場の雰囲気も円滑にします。採用面接での対人関係に関する質問では、この「受け流すしなやかさ」こそが、あなたの適性を証明する鍵となります。


4. 「目立たないこと」に誇りを感じる、影のヒーローたち

鉄道員の仕事が世間で注目されるのは、残念ながら「事故」や「トラブル」が起きた時がほとんどです。何事もなく一日が終われば、私たちの存在はお客様に意識されることすらありません。空気のような存在。それが鉄道員の理想の姿です。

世の中には「誰かに褒められたい」「目に見える成果を出して注目されたい」という欲求を持つ人が多いですが、鉄道の現場ではその欲求は時に危険な要素になります。

「誰にも気づかれずに一日が終わった。それが最高の結果だ」 そう思える「縁の下の持ち味」があるかどうかが、適正を分けます。

運転士として、雨の日も雪の日も、正確にホームの停止位置に停める。 駅員として、スムーズな乗り換えを案内し、お客様の流れを止めない。 これらの「完璧な仕事」は、誰からも拍手されません。しかし、その積み重ねが、日本の鉄道という世界一のインフラを支えているのです。

「自分がいなくても世界は回る。でも、自分がここにいるからこそ、今日の世界は昨日と同じように回っている」 この静かな自負心を持てる人は、鉄道員という一生の仕事において、揺るぎないやりがいを見つけられるはずです。


まとめ:あなたは、鉄道員として「走り出せる」か?

ここまで、私が現場で働く中で感じた「鉄道員になるために大事なこと」を紐解いてきました。

  1. 責任感を適切にコントロールできる(抱え込みすぎない)
  2. 淡々とした繰り返しを尊べる(夢に見るほどの時間意識)
  3. 人に対してしなやかな距離を保てる(嫌いになりきらない)
  4. 目立たない誇りを知っている(空気のような存在)

もちろん、これらすべてが最初から備わっている必要はありません。 私自身、最初は失敗ばかりで、毎日緊張で震えていました。今でも寝坊の夢を見て飛び起きます。駅員、車掌、運転士とキャリアを重ねる中で、現場の先輩たちに揉まれ、少しずつこれらの資質を「後天的」に身につけてきたのです。

採用試験で見られているのは、今のあなたの完成度ではありません。「鉄道員という特殊な環境に適応し、成長していける土壌があるか」です。

もしこの記事を読んで、「自分にもそんな一面があるかもしれない」と思えたなら、あなたはもう鉄道員としての第一歩を踏み出しています。

あなたの挑戦を、現場の改札口で待っています!

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